逸る気持ちのまま、ユーラが現れるや否や事故当時の自分の持ち物について尋ねたルフレだったが、結果は芳しくなかった。
「執事のロバート様に確認してみたのですが、お荷物は落下の際の衝撃でどこかへ振り飛ばされてしまったようで……。ルフレ様をお助けした時、周囲にそれらしいものはなかったとのことです」
「そう、ですか……」
「時間が経っていますから難しいかもしれませんが、大事なものでしたらもう一度探していただきましょうか?」
「い、いいえ! 大丈夫です。ただ、ちょっと気になっただけなので。ありがとうございます、ユーラ」
ユーラはルフレが珍しく焦ったような、強い調子で質問したからか、控え目に提案してくれたものの慌てて断った。
既に、何から何までお世話になりっぱなしなのだ。それさえ見つければ記憶が戻るとはっきりしているならまだしも、探すべきものが何かさえ不確かな状態でこれ以上迷惑は掛けられない。
ユーラに心配をさせないよう、ただちょっと聞いてみただけ、という素振りを保って会話を終わらせる。
(何もなかったのなら、仕方ないですよね。どんなものかも分からないのに探していただくなんてできませんし。記憶が戻って、本当に大事なものだったらその時にまた考えればいいんですし。……ええ、仕方ない、です……)
何度もそう自分に言い聞かせて、相変わらず何かを訴えるように騒ぐ心を落ち着かせようとするものの駄目だった。
クロムが持ってきてくれた本も昨日までは話の運びが面白くて夢中になり、長時間起きているのは負担になるからと、意外と容赦がないユーラに取り上げられてしまうくらいだったのに、今は無味乾燥な文字の羅列にしか思えずちっとも頁を捲る手は進まなかった。
大事に仕舞っていた秘密の宝箱を久々に開けてみたら、一番大切なものが失くなってしまっていた気分だ。
こんな風に胸を苦しくさせるなら、それが何なのか思い出させてくれればいいのに。
自分のことなのにままならない心の動きを持て余しながら、ルフレは窓から差し込む淡い日差しをぼんやり眺めていた。
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