ねえ、あなた。
兄さまが言っていたのと同じ場所に傷がある、父さまや兄さまにとてもよく似たあなた。
あなたはいったい誰なの?
どうして毎晩のようにわたしのところへ来てくれるの?
……ああもう、まただんまり。
ここに来るのは本当に危ないのよ、分かっている? 万が一見つかって、姉さまのところへ忍び込もうとしていると誤解されたら、まず無事でいられないのに。
あなたが優しく母さまや兄さまたちのお話を聞いてくれるから、何故かとっても懐かしい気持ちになるから、つい甘えてしまったけれど。もうここへ来てはダメよ。
…………どうして? どうしてまた来るなんて言うの?
<マーク>兄さまは——陛下は変わってしまった。わたしには変わらず優しいのに、まるで父さまが母さまにしていたみたいに<ルキナ>姉さまをこの塔に閉じ込めて、誰にも会わせないで……。
姉さまのお母さまがしたことへの報復だ、なんて言う人もいるけれどきっと違うわ。だって————。
ううん、違うの。わたしが言いたいのはそんなことじゃなくて……あなたに危ない目に遭ってほしくない。母さまも、きっとそう思うはず。なんだかそんな風に感じるの。
わたしは自分の意思でここにいる。閉じ込められているのは、わたしじゃなくて姉さまよ。だからわたしを助けようなんてしないで。
母さまはもういないのに、あの幸せだった楽園はどこにもないのに、手に入らないひとを求めて、哀しい夢を見続けて狂っていく<マーク>兄さまのことは、ちゃんとわたしが止めてみせるから。
※コメントは最大1000文字、5回まで送信できます