失楽園 - 4/7

 ねえ、あなた。
 兄さまが言っていたのと同じ場所に傷がある、父さまや兄さまにとてもよく似たあなた。
 あなたはいったい誰なの?
 どうして毎晩のようにわたしのところへ来てくれるの?
 ……ああもう、まただんまり。
 ここに来るのは本当に危ないのよ、分かっている? 万が一見つかって、姉さまのところへ忍び込もうとしていると誤解されたら、まず無事でいられないのに。
 あなたが優しく母さまや兄さまたちのお話を聞いてくれるから、何故かとっても懐かしい気持ちになるから、つい甘えてしまったけれど。もうここへ来てはダメよ。
 …………どうして? どうしてまた来るなんて言うの?
 <マーク>兄さまは——陛下は変わってしまった。わたしには変わらず優しいのに、まるで父さまが母さまにしていたみたいに<ルキナ>姉さまをこの塔に閉じ込めて、誰にも会わせないで……。
 姉さまのお母さまがしたことへの報復だ、なんて言う人もいるけれどきっと違うわ。だって————。
 ううん、違うの。わたしが言いたいのはそんなことじゃなくて……あなたに危ない目に遭ってほしくない。母さまも、きっとそう思うはず。なんだかそんな風に感じるの。
 わたしは自分の意思でここにいる。閉じ込められているのは、わたしじゃなくて姉さまよ。だからわたしを助けようなんてしないで。
 母さまはもういないのに、あの幸せだった楽園はどこにもないのに、手に入らないひとを求めて、哀しい夢を見続けて狂っていく<マーク>兄さまのことは、ちゃんとわたしが止めてみせるから。
 
 
 

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