コウノトリさん、お寒い中大変ですね! - 4/4

 堪らないのは具合が悪いという母が心配で心配で、じりじりと待機していたマークである。

 この時代の幼い姉と自分の手前、明るく振舞ってはいたけれど不安で仕方がなくて。ようやく父に呼ばれたと思えば、心配ないと言ってくれたのはいいが墨と筆と紙という、母の容態に何の関係があるのか分からないものを用意してくれと言われ。

 戸惑っていると、何やらそれで分かり合った両親は息子が目の前にいることも忘れて堂々といちゃつきだしたのだ。名前がどうのと言っているが……訳が分からない。

「あのー、父さん、母さん。お取り込み中のところ悪いんですけどー、僕にも分かるように説明してもらえませんか?」

 どんどん二人だけの世界に入っていく両親が醸し出し始めた、甘い甘い空気から逃げ出したかったのだが、事情を把握しないままでは待っている姉も、幼い姉弟も可哀想だ。

 その一心で恐る恐る声を掛けると、「ルフレ……」「クロムさん……」と互いの名を呼びながら手を握り、見つめ合っていた二人は驚いた顔でマークの方を振り返った。……本当に、息子の存在は頭から消えていたらしい。

(仲良き事は美しき哉、とは言いますけれどね……年頃の子供の前でこういうことするのやめてほしいなあ)

 だから口の悪い貴族たちに、『あのご様子では妃殿下の腹はご退位まで常に膨らんでいた、と後々書かれかねませんな、はっはっは!』と言われてしまうのだ。

「えっと、母さん。本当に、本当に具合は悪くないんですね?」

 念押しのようにそう尋ねれば、母はこくりと頷く。そんな母を抱き寄せたクロムはひとつ咳払いをすると、神妙な面持ちになって(ただし顔にはまだ墨が塗りたくられているので効果は薄い)口を開いた。

「実はな、マーク。ルフレは――――――

 ***

 それからしばらくして誕生した聖王夫妻の第三子は、懐妊が明らかになった地にあやかって、ソンシン風の名が付けられたという。

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