彼の愛し方は穏やかで、とても心地が良い。まるで子供をあやすような、でも絶対に子供に対するものではない含みを持った手付きでゆっくりと、ルフレのすべてを優しく愛撫する。
「ふっ…ん……っぁ……」
敷布の海に沈む前に入り込んできた温かな舌は、上顎や歯列も含め、余すところなくやわやわと口腔内を撫でていた。
深い口づけに未だ慣れないルフレが、戸惑いながらも彼の首に腕を回して縋り付いていると、自然な動きで舌が絡め取られた。
「……っん、ん…ぁ、ふ……っ」
時折もれる鼻にかかった甘い声が、自分のものだと思うと恥ずかしくて堪らない。それでも気持ちが良くて、気持ちが良くて仕方がなかった。
送り込まれる唾液を飲み干せば、大きな手がよくできたと言わんばかりに優しく髪を梳いてくれた。
その手が温かくて、優しすぎて泣きたくなる。
こうして彼の熱に触れている時だけ、ルフレはあの耳障りな笑い声と、命の灯火が消えた身体のつめたさを忘れられた。
こちらの息が苦しくなってきたのが伝わったのか、<クロム>は口付けを解いて、今度は頬、首筋、鎖骨、さらにその下まで唇を落としていく。
手の動きも変わらず止んでいなかった。決して乱暴でなく、性急でもないその動きは、ゆるゆるとルフレの熱を高めていく。
やがて徐々に彼の熱と混じりあって、互いの熱と吐息を分け合ってとろけてしまう。
少しだけ上ずった掠れ声で囁き込まれるのは甘い睦言。彼女が上り詰めるまで、温かな雨だれのように絶えることがない。
最早ルフレは、彼が与えてくれるぬくもりと、魂の奥底まで染み入るやさしい囁きなしには、夜を超えられなくなりつつあった。
始めは、あの夜一度きりと思っていた。なのに、質の悪い媚薬に溺れたように、彼を求める回数は増えていく。
自分の心が、ずぶずぶと底なし沼に沈んでいくように絡め取られていくのを分かっていて、けれどどうすることもできない。
今やルフレは、恋しいひとと同じ男の腕の中の優しい檻に、進んで身を投げ出して愛を乞う囚われ人だ。
いけない、と押し留める声は、彼と夜を過ごす度にか細く頼りなげなものになって、もうほとんど聞こえなかった。
代わりにルフレの脳裏を占めつつあるのは別の声。
自分がクロムの恋人であるという、この夜の間だけの幻想が、ほんとうになればいいのにと願う、身勝手な女の声。
……だから、これから起きることは、半身である青年への誓いより、ほんのひと時でも己の恋情を優先させたいと考えた、不実な女に対する罰なのかもしれなかった。
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