眠り姫と不埒な王子 - 1/4

 最近の<ルキナ>は、『おてつだい』に精を出している。
 子どもには、大人がやることを自分もやりたがる時期があるものだが、<ルキナ>の場合はそれが今だった。
「るきな、おてつだいします!」
 やる気をみなぎらせて小さな王女殿下が手を上げると、侍女や女官どころか、厳つい武官たちまで相好を崩す光景が、城内のあちこちで見られた。
 今日も今日とて勢い込んで手伝いを申し出ると、父のクロムは「大事な仕事だから頼んだぞ」と優しく頭を撫でてくれながら、あることを任せてくれたのである。
 
 
 *
 
 
「るるる〜ら〜ら〜♪」
 鼻歌を口ずさみながら、<ルキナ>は王族の居住空間がある奥向きをご機嫌で歩いていた。
 てくてく、てくてく。
 いつもは探検と称してあちこち寄り道をし、陰ながらついている護衛をハラハラさせるのだが、今日は真っ直ぐ目的地へ向かう。
 なにしろ今は大好きな『おとうさま』のお手伝いの真っ最中。寄り道なんて言語道断なのだ。
 それに、これからいつもの冒険より嬉しいことが待っている。足音だけでもご機嫌なことが分かるくらい、<ルキナ>の足取りは弾んでいた。
 目指すのは聖王妃の間——母のルフレの部屋だ。
 
「にな、こんにちは!」
「姫さま! 今日はどうされたんですか?」
「るきな、おてつだい中なんです」
「あら、どんなお手伝いですか?」
 聖王妃の間に到着した<ルキナ>をにこにこしながら出迎えてくれたのは、母の侍女のニナだ。
 リボンで束ねている、くるくるカールした金髪が焼きたてのパンみたいで美味しそうだなあと、彼女と顔を合わせる度にちょっぴりお腹が空いてしまうのは秘密である。
「おとうさまが、おちゃをするからおかあさまをよんできてほしい、って。いっしょにおやつを食べるんですよ」
「ふふっ、素敵ですね。ルフレさまなら午前中のご公務が終わられて、居間でご休憩されていますから、きっと喜ばれますよ。ご案内します」
「あっ、るきなひとりでだいじょうぶです!」
 <ルキナ>に目線を合わせしゃがんでいたニナは立ち上がってきびきびと歩き出し、案内してくれようとしたけれど、慌てて侍女のお仕着せを引いて断った。
 不思議そうな顔をするニナに、今日は『おてつだい』だから、ひとりで母のところへ行けるし、扉も開けられると主張すると、何とも言えない微笑ましそうな顔をされる。
 日々成長はしていても、まだ一般的な五歳児よりやや発育が良い、程度の身長しかない<ルキナ>は、いつも母に会いに来た時は侍女に先導してもらって、扉も開けてもらうのだが。
 それを自分でやる、と大張り切りで主張する姿が、珍しく年相応でお可愛らしいなあ、と母の侍女に思われていることを知らない<ルキナ>は、ニナに見送られつつ控えの間から短い内廊下に出て、元気よく居間へ向かった。
 
 

送信中です

×

※コメントは最大1000文字、5回まで送信できます

送信中です送信しました!