「わっ……」
最初に目についたアルバムを手に取ったルフレは、ぱらりとめくったページの写真を見て、思わず声を上げていた。
「……これ、若い頃の母さま……ですよね? 私にそっくり……」
紺の上下に、白いスカーフ、クラシカルなデザインのセーラー服を着た母が、公園らしき場所で写真に収まっている。
ルフレが髪をツインテールにしている一方、写真の中の母は縛らず背中に流しているという違いはあるものの、それ以外は双子のように瓜二つ。
確かに、これだけ似ていれば、昔の母を知る人がルフレを見たら驚くだろう。
ついページをめくる手が早くなる。ただ、アルバムにはいわゆる家族写真というものはなく、学校行事で撮ったと思われるものが大半なのが少し残念だ。
それでも、自分が知らない昔の母の姿を見ていると懐かしさと母恋しさで涙が出そうになり、ふるふると頭を振って意識を切り替えた。
「えっと……あとは本と、細々した小物と……あら、この箱開きませんけど何が……?」
キャビネットの中に収められた品々を、ひとつずつ見ていく。ファウダーが言っていたようにあまりたくさんは持ち出せなかったようで、近くにある机の上に出していってもすぐ終わってしまう量だ。
ただその中に、厚めの本が一冊入るくらいの寄木細工の箱があって、結構な重さだったので中を確かめようとしても開かない。しばらく試行錯誤して、もしかしたらこれはいわゆるからくり箱なのでは、と気付いた。
確か、箱の表面を一定の順序でスライドさせないと開けられない仕組みになっていたはずだ。何が入っているのか気になって、うーん、と唸りながら試すことしばし。
「やった、開きました……!」
昔読んだ本に、からくり箱の開け方について載っていたのを思い出せたのが良かった。さすがに同じ手順で、とはいかなかったものの、スライドさせる順番の法則性のようなものがあって、それを試していくことでさほど時間をかけず開けることができた。
中に入っていたのは、シックな花模様があしらわれたハードカバーの冊子だった。何気なく一枚ページをめくって、すぐにパタン! と閉じる。
(――――! これ、母さまの日記帳……ですよね? ど、どうしましょう……開けちゃまずかったでしょうか……)
からくり箱に入っていた時点で、秘密の品がしまわれていると察するべきだったのかもしれない。けれどもう箱は開いていて、中身が日記帳だとばっちり分かってしまった。
ルフレの中で、日記を見たい欲求と、若かりし頃の母のプライベートに踏み込むのはどうなのか、と制止する理性の声がしばらく戦う。
程なくして勝利を収めたのは、日記を見たい欲求の方だ。
ルフレを身ごもり、ファウダーの父に堕ろすよう迫られていたらしいのに、衣食住が保証された暮らしを捨てて、女手一つで赤ん坊を生み育てることを決意した心境が知りたかったこともあるし、インバースが言っていた、母が父を押し倒したという話の真偽も気になったのだ。
(ごめんなさい、母さま……! 秘密は絶対守りますから!)
心の中で母に手を合わせ、年代物の机とセットらしいどっしりした椅子に腰掛けて、ルフレはゆっくり日記のページを追い始めた。
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