聖王クロムに第二子が誕生した年の冬。城内で起きた出来事を書記官が事細かに書き留めた、ある日の記録にはこのような一文が残されている。
――――密偵たちの頭領格である男と、寵妃縁の青年が王の逆鱗に触れたことで、城を追われた、と。
そしてこれを境に、聖王の、かつて己の軍師であった寵妃への執着は狂気の度合いを増していく。
王の庭の薔薇たちは年を追うごとに秘密と恋着を吸い上げて濃密な香気を放ち、狂おしいほど美しく咲き誇った。
やがてその薔薇は側室腹の中では最年長の王子マークの手で手折られ、とある女性へ贈られることになるのだが。
それは今しばらく歴史の針が進み、鳥籠が意味をなさなくなった未来での話である。
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