すうすうと穏やかな寝息を漏らすようになったルフレを抱き上げ、乱れた夜着を直してやりながら、最後に一度、綺麗に浮き出た背骨の辺りをきつく吸う。唇を離せば朱い、華のような痕。この位置ならば誰も、彼女自身すら気付かないだろう。
それでひとまずは満足したが、クロムの昂ぶりは行き場をなくしてしまっていた。このまま続けて、誰にも踏み荒らされていない彼女の最奥を拓いてしまいたい欲求は全身で燻っていたものの。また先刻のように目覚めてしまうかもしれないと思うと躊躇われる。
幸い、今回は夢だと言い張って誤魔化したがこれ以上は苦しい。
(今度は、ソールにもっと強い薬を用意してもらわないと駄目だな……)
何をしても、朝まで絶対に目覚めないくらいの強いものを。
口角を吊り上げ、クロムは懐から取り出した小瓶を視線の先で揺らした。薬がもたらす睡魔で朦朧としながらも、昼の間は押し隠している彼の荒々しい情欲を感じ取って怯えるルフレに、口移しで飲ませてやったものだ。強い薬だが、幼少時から様々な毒や薬に慣らされた彼には効果がない。
着衣を元に戻しそっと寝台に横たえ、床に放り捨てていた掛布も掛けてやって、寝所に忍び込んだ時と同じ状態にしたクロムは最後に堪えきれず、もう一度だけルフレの瑞々しい唇を啄んだ。
……甘い。甘すぎておかしくなりそうだ。けれどこれ以上は駄目だと、欲求に忠実なもうひとりの自分をクロムは宥める。
ルフレは自分のことを優しい男だと思っているようだった。だからもうしばらくは、彼女の半身が、実は愛しい女に恋焦がれる内に、その意志を踏みにじってもすべて自分のものにしたいと思うようになっていることを、知られたくない。
(以前、平和になったらと言ったが……それまで待てないんだ、ルフレ。お前が欲しくて欲しくて気が狂いそうだ……。誰にも渡したくない。一刻も早く俺のものにしたい。こんな俺を……嫌いになる、か? だとしても、もう……離せない)
名残惜しげにルフレから顔を離し、部屋を後にしたクロムの足音が完全に遠ざかった後。きらりと黒い石が月明かりも届かないのに煌めいたのを、見た者は誰もいなかった。
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