三の月二十九日
いつもふらふらどこかにいっているまーくにいさんがひさしぶりにかえってきました。わたしも“まーく”もうれしくっておおはしゃぎ! ねえねえにいさん、にいさん、かたぐるましてください! かたぐるま!
「はいはい、分かってますよ。うんしょ、っと。わあ、重くなりましたねえ、‘マーク’も」
えー! ひどいわまーくにいさん。れでぃにたいじゅうのはなしはげんきんなんですよ! もう、そんなだからおんなごころがわからないっていわれるんです。
「うーん、ぐさっとくる台詞です……」
「でも、にいさん、ちゃんとまいとしこのひにかえってくるじゃない。てがみだっていっぱいかいてるし」
ち、ち、ち。あまいです、“まーく”! とうさんとかあさんをかんがえてみればわかるわ。とうさんはまーくにいさんみたいにまめじゃないし、くちだってうまくないでしょう。でもかあさんはそんなとうさんにめろめろ!
「め……ど、どこでそんな言葉を覚えてくるんですか、君は」
んもう、にいさんだまってくださいっ。おとこのひとのくちかずって、おおければいいってものじゃないんですよ! そう、とうさんみたいにここぞってときにびしっときめるほうが、おんなごころにはきくんですから!
……あーっ、しょーらいはかあさんいじょうのてんさいぐんしになるよていの、わたしのことばをうたがってるの、にいさん? それなら……ええいっ。
「わわっ、やめてくださいよ。これから会いに行こうとしてたのに、髪の毛がぐしゃぐしゃじしゃだ」
いいんですー。これでちょっとはおとこまえになったわ。ねえまーくにいさん、いつもよゆうなふりしてたらだめですよ。たまにはひっしなところもみせなきゃ。すきならすきってちゃんというの! おとこはあたってくだけろです!
ふえ? くだけちゃだめ? ……うーん、そういえばそうよね、“まーく”。わたしにいさんがだいすきだから、しあわせになってほしいし。くだけちゃったらまずいわ。これはあれです、ことばのあやとり! あれ、にいさんどうしてわらってるの?
「ぷくくく……、それを言うなら言葉のあや、でしょう。でもありがとう、‘マーク’。僕も君が大好きですよ」
「にいさん、にいさん、ぼくは?!」
「もちろん、“マーク”、君のことも。二人とも、僕の大事な家族です」
ふふ、くすぐったいですー。そうね、にいさん。かぞくっていいことば。おひさまのしたでおひるねしてるみたいな、ぽかぽかしたきもちになるの。
かぞくがふえるとうれしいから、がんばってくださいね、まーくにいさん。
「はいはい。かしこまりました、姫君」
こういうときのまーくにいさんのわらいかたは、じつはけっこう、ううん、とってもかっこいい。“まーく”も、おとなになったらこんなふうに、わたしいがいのおんなのひとにわらってあげたりするのかな。……なんだかちょっともやもやします。
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