失楽園 - 1/7

 

 ……あら、こんばんは。
 ふふっ、今日もやっぱり窓からなのね?
 姉さまのところ程じゃないけど、ここだって警備が厳しいのにどんな魔法を使っているのかしら。
 でもだーめ。何回来られたってわたしはここを離れません。わからずやの陛下が姉さまを塔から出してくれるまで、絶対、ぜーったい動かないの。
 え? それでも構わない? 代わりに母さまのお話が聞きたいの、昨日もその前もお話したのに? 
 ……そうね、わたしだけが生まれたときから母さまと一緒にいられたから……多分、家族の中で父さまの次に母さまとの思い出が多いのはわたし。兄さまたちは——一番上の兄さま以外、母さまに会えないままだったもの。
 でも、どうしてそんなに母さまのお話を聞きたがるの? あなた、母さまのお友だち? ……あら、そこはだんまりなのね。淑女に昔話をおねだりするなら、それ相応の礼儀というものがあるんじゃないかしら。
 でもいいわ、お話をしてあげる。
 わたしが一番幸せだった頃の話。
 愛とは光のようにやさしくあたたかで、幸福なものだけでできていると信じていた、そして父さまと母さまの間にもそんな穏やかな愛があって、だからわたしが生まれたのだと——疑うことさえなかった日々のこと。
 今はもうどこにもない幸せな場所の話。
 
 そう、わたしは青い楽園に住んでいたのです。

 

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