……あら、こんばんは。
ふふっ、今日もやっぱり窓からなのね?
姉さまのところ程じゃないけど、ここだって警備が厳しいのにどんな魔法を使っているのかしら。
でもだーめ。何回来られたってわたしはここを離れません。わからずやの陛下が姉さまを塔から出してくれるまで、絶対、ぜーったい動かないの。
え? それでも構わない? 代わりに母さまのお話が聞きたいの、昨日もその前もお話したのに?
……そうね、わたしだけが生まれたときから母さまと一緒にいられたから……多分、家族の中で父さまの次に母さまとの思い出が多いのはわたし。兄さまたちは——一番上の兄さま以外、母さまに会えないままだったもの。
でも、どうしてそんなに母さまのお話を聞きたがるの? あなた、母さまのお友だち? ……あら、そこはだんまりなのね。淑女に昔話をおねだりするなら、それ相応の礼儀というものがあるんじゃないかしら。
でもいいわ、お話をしてあげる。
わたしが一番幸せだった頃の話。
愛とは光のようにやさしくあたたかで、幸福なものだけでできていると信じていた、そして父さまと母さまの間にもそんな穏やかな愛があって、だからわたしが生まれたのだと——疑うことさえなかった日々のこと。
今はもうどこにもない幸せな場所の話。
そう、わたしは青い楽園に住んでいたのです。
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