ばん、と勢い良く背中を叩かれ、少し離れた場所から姉が両親に抱きついて泣きじゃくる様を見守っていたマークは思わずよろめいた。恨めしげに見上げた先には、先刻重要な役どころを演じたフェリアの西の王。
母とフラヴィア以外、軍内の誰にも死んだと思われていた彼は運命など死人の言い訳だと、厳かに宣言した口元を吊り上げ笑う。
「いいのか、マーク。混ざらなくてよ」
「……僕は、ルキナさんみたいに未来でのこと、覚えてませんから。あそこにいるべきなのはルキナさんですよ。今までずっと、つらかった筈ですし」
半ば独り言のように呟いたところで、今度はがしがしと頭を撫ぜられた。見れば、フラヴィアがやはり笑ってマークの髪を乱暴にかき混ぜている。行為に似合わずその眼差しは優しく、決まりの悪さに思わず俯いた。
「馬鹿を言うのはおよしよ。あんただって家族だろう。……甘えてきな。二人に甘えるのは、あの子だけの特権じゃないだろう?」
「そうだぞー。お前くらいの年の内に甘えておかないと、その内甘えたくても甘えられなくなる。やせ我慢はよせや、な」
「こんなでかい図体になっちまってから甘えても不気味だからねえ」
「なんだとお?!」
そのままフェリアの両王は抜き身の武器を手にし睨み合う。周囲の屍兵は彼等とルキナを追いかけてきたマークによってすべて掃討されていたが、それでもあまりの緊張感のなさに少し呆れてしまう。それだけ自分と相手の実力を信じているということなのだろうが。
いつの間にか両親の方へ押し出されていたマークはふ、と口の端に笑みを乗せた。やせ我慢とバジーリオは言ったがやはり見抜かれている。あれこれと思い悩むのは確かに自分には似合わない。
「ルキナさんばっかりずるいですよー! 僕も混ぜて下さーい!」
ひとつ大きく息を吸い込むと、マークは常の明るい声音で叫び勢い良く姉と両親の輪の中へ飛び込んで行った。
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