愛し君へ - 1/3

 ひどい嵐の晩から一夜明けると、イーリス聖王国の中心、聖都の空は晴れ渡り、美しい虹がかかっていた。国名からして虹に由来する聖王国にとってはまたとない僥倖である。
 しかも七色の虹と華やかさを競うようにして青空に打ち上げられたのは、世継ぎが生まれたことを示す色鮮やかな光弾だ。色は薔薇色。つまり王女誕生、という意味になる。
 二重の意味で喜ばしい朝、聖都の人々は空を見上げるや、ある者は喝采を叫び、ある者は「未来の女王陛下に!」と朝食とともに秘蔵の酒瓶を開けて乾杯し、またある者は誰彼かまわず手を取っては踊り出していた。
 何も知らない人間からすれば呆れるほどの浮かれようで、近日中には今の聖王代理が妃を迎えた婚礼の祝いの時と匹敵する、盛大な祭りが開かれることになるだろう。
 何しろペレジア戦後、聖王家には王族と呼べるのはたった二人しかいなかった。現聖王代理クロムと、王妹のリズ。遥か遠い昔、神竜の力を授けられ悪しき竜を倒した、初代聖王の血を受け継ぐ聖王家を尊んでいるイーリスの民にとって由々しき事態である。
 そんな中生まれた、父王譲りの髪と瞳の色をしているという王女。皆、彼女の誕生を心待ちにしていたのだった。聖王国の未来を担う、新たな希望として。

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